
- 食料問題・地球環境
- 2022.05.24
世界の食料問題とは。持続可能な社会の実現に向けての取り組みも紹介
年々深刻化している食料問題。世界ではすべての人が十分に食べられる分の食料を生産できているにも関わらず、飢餓は深刻になっています。この記事では、食料問題とは何か、食糧問題との違いや食品ロスとの関係について解説し、さらに持続可能な社会の実現に向けた取り組みを紹介します。
食料問題とは

食料問題とはその名の通り、食料に関する問題の総称です。主に飢餓と食品ロスがあります。まずは、食料問題の意味や食糧問題との違いについて解説します。
食料に関する問題の総称
食料問題とは食料に関する問題の総称で、主に飢餓と食品ロスの2つが挙げられます。国際連合食糧農業機関(FAO)の定義によれば、飢餓とは健康的で活動的な生活を送るための食物エネルギーを継続的に入手できないことです。食べ物があっても、必要な栄養素が足りない栄養不足や栄養失調も飢餓に含まれます。
一方で食品ロスとは、まだ食べられる食べ物を棄ててしまうことです。世界中に食べ物が平等に行き渡らないだけでなく、破棄した食べ物の処分する際のコストや環境負荷も問題となっています。
食糧問題との違い
食糧は主食のことを指しますが、食料は主食も含めたすべての食べ物のことを指します。食糧問題とは、人口に対する食糧(主食)が不足している状態、もしくは人口の増加に食糧の供給が追いつかない状態のことです。人口食糧問題とも言われていて、世界中で食べられている代表的な穀物は、米、小麦、トウモロコシ、ジャガイモなどが挙げられます。食糧は体のエネルギーとなる炭水化物系の食べ物で、野菜や果物、肉、魚などはすべて食料に含まれます。
世界全体の食料事情

年々深刻化する食料問題ですが、食料は十分にあるのに行き渡っていないのが現状です。
穀物生産量は増加
世界の穀物生産量は毎年26億t(トン)以上※1で、2021/22年度は2000/01年度に比べて1.5倍になっています。この生産量を世界の77億人に平等に分配すれば、年間1人当たり34kg以上食べられる計算です。日本人が食べている穀物は年間154kg※2ですが、在庫も含め世界ですべての人が十分に食べられるだけの食糧は生産されています。
食料需要の拡大により食料の国際価格は上昇
食料の国際価格の高騰により、食料危機とも呼ばれるほどの事態になっています。国際価格が上昇している主な理由として、以下が挙げられます。
※1 国連食糧農業機関(FAO)(2017‐2018概算値/2019年)
※2 厚生労働省「国民健康・栄養調査(2017年)」
・世界的な人口増加(1970年37億人→2020年77億9500万人)
・所得向上による畜産物の需要増加
・穀物のバイオ燃料への転用
・穀物市場への投機マネーの流入
現在は飽食と飢餓が並存している
先進国では食べ残しなどが消費されずに食料が棄てられている一方で、世界全体では最大8億1100万人、10人に1人が慢性的な栄養不足で苦しんでいます。
地域別に見るとアジアが一番多く、人口に占める割合はアフリカが多いです。飢餓で苦しんでいる人達の約7割が農村部で、ほとんどがアジアやアフリカに住んでいる小規模な農業を家業にしています。上記のような地域では、地球温暖化による天候の不順や自然災害の影響を受けやすく、安定した収入を得るのは難しいです。その結果、病院に行けない、子どもを学校へ行かせられないなど生活全般にも大きく影響しています。
今後は人口増加に伴う食料危機が予想される
世界の人口は2050年には97億人になると予想されていて、人口増加に伴い食料危機が深刻な問題となります。人口増加により、飢餓で苦しむ人がより増えてしまう可能性が高いです。食料危機を解決するためには、今よりも50%以上、状況によっては60%以上の食料増産が必要です。しかし、食料増産に必要な土地や水には限りがあります。人間が使う水全体の90%を農業が使用しているため、今後は水不足が懸念されています。
食料問題と食品ロス

世界全体で人口に見合うだけの食料は生産されていますが、飢餓に苦しむ人は増えています。その原因に食品ロスが挙げられます。ここでは、世界の食品ロスの現状や食料問題との関係を解説します。
世界の食品ロスの現状
食品ロスとは、まだ食べられるのに捨てられる食品のことです。世界では毎年、食用に生産されている食料の1/3(13億t)が捨てられています。日本では年間570万t(令和元年度)で、これは日本の人口1人当たり年間約45kgの食料ロスを出している計算です。日本の食料自給率(カロリーベース)は37%のため、食料は海外からの輸入に依存しながら、その多くを破棄しています。
食品ロスの問題点
食品ロスの問題として、ゴミの増加が挙げられます。環境省の調査によると、ゴミを破棄するためのコストは年間2兆円だと言われています。また、可燃ゴミを燃やすことによるCO2の排出や焼却後の灰の埋め立てといった環境負荷も深刻な問題です。食料生産には水や土地などの資源が必要になりますが、食品ロスにより地球上の限られた資源も無駄にしているのが現状です。
食品ロスの原因と食料問題との関係
日本を始めとする先進国では、食べ残しや賞味期限切れなどの消費する過程で処分される食べ物が多いです。これは、生産段階で需要を超える量を生産してしまう過剰生産が原因だと言われています。一方で発展途上国では、食材を保管できない、加工するための技術がない、食材を運ぶための手段やガソリンを買うお金がないなどの理由で、必要な人達に届いていない状態です。生産段階よりも加工や流通、消費段階で食品ロスが発生しています。
食品ロスをなくすためには、食料が世界中のどの地域にも行き渡る仕組みが必要です。食品ロスをなくすことは、食料問題への解決にもつながります。
食品ロスの詳しい原因や家庭でもできる対策については、こちらの記事で詳しく解説しています↓

食用コオロギで持続可能な社会の実現を目指すグリラス

深刻化する食料不足と食品ロスへの対策として、期待されるのが食用コオロギです。最後に、食用コオロギの可能性と食用コオロギの普及を目指すグリラスの取り組みについて解説します。
食用コオロギの可能性
食料不足と栄養不足の中で特に課題になるのがタンパク質の確保です。2025〜30年には、世界でタンパク質の供給が需要に追いつかなくなると推測されています。その対策として期待されるのが、食用コオロギです。
コオロギは1kgのタンパク質を生産するのに、必要な餌や水の量が牛や豚などの家畜に比べて圧倒的に少ないのが魅力です。二酸化炭素など温室効果ガスの排出量も畜産より少なく、環境負荷を抑えながらタンパク質の確保を可能にします。また、コオロギの餌は制限がないため、食品ロスを餌として活用することもできます。
食品ロスから新たなタンパク質を生み出すサーキュラーフード(循環型食材)として、持続可能な社会の実現へ貢献できる食材です。
食用コオロギ普及に向けた取り組み①技術
グリラスは2019年に設立されたフードテックベンチャーで、食用コオロギの量産、普及に取り組んでいます。徳島大学における世界トップレベルのコオロギに関する基礎研究を活かすために創業されました。より人的資源を必要としない生産システムの構築を行っています。
食用コオロギ普及に向けた取り組み②商品化
グリラスでは以下の商品等に向けた原料供給や商品開発・販売しています。
・良品計画との共同開発「コオロギせんべい」
・レストランANTCICADA「コオロギラーメン」
・"サーキュラーフード"をコンセプトに開発した自社ブランド「C. TRIA(シートリア)」のチョコスナックや保存食としても可能なレトルトカレーなど
「C. TRIA」シリーズの購入はこちらから↓

食料問題の現状や食品ロス削減への取り組みを知ろう

現在の日本では便利さを追求した結果、旬を問わずにいつでも食料が手に入るようになりました。その反面、多くの食品ロスが発生しています。一方で、食料が手に入らずに飢饉に苦しむ人達も増えています。食品ロスを減らすことが食料問題の解決の糸口です。食品ロスの削減にむけての取り組みを知り、できるところから始めてみませんか。