サーキュラーフードが救う、他人事じゃない食品ロス問題と私たちの健全な生活

サーキュラーフードが救う、他人事じゃない食品ロス問題と私たちの健全な生活

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農林水産省のデータによると、日本の食品ロスは年間570万トンにも及ぶといいます(取材当時)。本来、食べられるはずなのに捨てられているたくさんの食品たち。私たちひとり一人ができることはあるのでしょうか。

今回お話を伺ったのは、食品ロス問題ジャーナリストの井出留美(いでるみ)さん。世界を飛び回りながら各国の食品問題や環境問題について取材を行い、日本で発信をしているそう。

なかなか身近に感じることが難しい食品ロスと環境問題の関わり、そして自分たちにできることを井出さんと一緒に考えていきましょう。

教えてくれるのは井出留美さん

井出留美さん

青年海外協力隊を経て、日本ケロッグ広報室長などを歴任。東日本大震災の食料支援で廃棄に衝撃を受け、自身の誕生日と震災の発生日を冠したoffice3.11設立。「食品ロス削減推進法」の成立に協力し、食品ロスを全国的に注目されるレベルに引き上げたとして第2回食生活ジャーナリスト大賞食文化部門を受賞。日夜、食品ロス問題に向き合い、解決のために奔走している。
オフィシャルサイト

日本の食品ロスと賞味期限の「勘違い」

井出さんによれば、日本の食品ロスは厳密にいえば570万トンでは収まらないのだそう。

「政府が発表している570万トンという数字のなかには、2つの大きな数字が入っていないんです。ひとつは、生産者のなかで行われている"生産調整"という、作りすぎてしまった作物の廃棄。そしてもうひとつが、災害時の備蓄品のロスです。この数字を入れると、日本の食品ロスは570万トンからさらに大きく膨れ上がります。

現在数えられている食品ロスは、販売期限切れなどで売れなくなった売れ残りなど事業者によるものが54%。そして、各家庭で作りすぎてしまった、食べきれなかったなどの理由で捨てられるロスが46%といわれています。

私はもともと外資系の食品メーカーで働いていたのですが、日本の品質基準は世界各国と比べても、とても厳しいです。賞味期限も、本来のおいしさの目安よりだいぶ早めに設定されているので、まだ食べられるのに売れなくなってしまう食品がたくさんあります。

そして何より、消費者が、賞味期限表示をしっかりと理解していないことに問題があると思っています。賞味期限が過ぎても、飲食可能な加工品もたくさんあります。もともと、賞味期限というのは品質が切れる日付ではなく、「おいしさの目安」です。それが事業者の物流や管理の事情で早めに設定されているものも多いので、"賞味期限が過ぎている=食べられないもの"ではないということを、多くの人に知ってほしいです」

日本の食品ロスと私たちとの関わり

井出留美さん

にこやかに穏やかに話す井出さんの姿が印象的でした

日本の食品ロスの量は全世界で6位。食品ロスが排出の一因となる温室効果ガスの排出量は、1位が中国、2位がアメリカ、3位がインド、4位がロシア、5位が日本です。上位国は、どの国も国土が広く、人口も日本より多い国ばかりです。そう考えると、日本の食品ロスは、世界の中でも深刻であるように思えてきます。

「例えば、アメリカでは食品をリユースする法整備がされていて、賞味期限が迫ったものを寄付するフードバンクが機能しています。万が一の食品事故に備えた寄付者の免責制度もあります。しかし日本は、ゼロリスクを求める傾向が強く、問題があったら会社の責任になってしまうのではないか"と、食品の寄付にも積極的ではありません。

日本では、食品は、小売店や飲食店から出るものは事業系一般廃棄物として、家庭から出るものと一緒に各地域のごみ処理場などで焼却処分されることがほとんどです。大量のごみを燃やすことは、二酸化炭素を含めた温室効果ガスの排出にもつながりますし、これが現在世界中で問題視されている気候危機につながっています。

さらにもっと身近な話をすると、ごみ処理場で食品を燃やすためのお金は、実はみなさんの払う税金からも捻出されているのです。

一世帯が一年間で捨てている食品は年間6万円に相当します。事業者から出される事業者系一般廃棄物も、みなさんの税金も財源となって処理されているんです。(自治体により異なり、たとえば世田谷区では1kgあたり約59円。)

食品ロスは、日本人の税金に限らず、長い将来の中では地球に生きるすべての人の経済的損失にもつながります。現在、世界全体の食品ロスが出している温室効果ガスの量は8〜10%で、世界中の自動車が出している温室効果ガスと同じくらいの量(10%)です。

このまま気候変動が進めば、洪水や熱波などの気象災害もますます悪化するでしょう。気象災害で受ける経済的損失は世界で400兆円を超えています。疾病リスクも高まっているのです」 

環境問題を解決する選択肢としてのサーキュラーフード

クランチ

世界の食品ロス問題に向き合い続けている井出さんも、グリラスの商品に注目しているといいます。

グリラスパウダー(※)を含む、食品ロスをアップサイクルすることで生み出された循環型食品のことを「サーキュラーフード」と呼びます。実はグリラスで作られるコオロギパウダーは、コオロギの飼育過程で食品ロスを活用しており、食品ロス問題の観点から見ても「持続可能」な地球に優しい食品なのです。

※グリラスパウダー:グリラス社が飼育する国内生産のフタホシコオロギを使った食品用パウダー

「食品を作って売って、そして廃棄するだけでなく”自然界には捨てるものがない”という考え方を基に、グリラスは持続可能な食品開発に取り組んでいますね。

コオロギは、牛や豚を育てるよりも飼育コストが低く、しかも省スペースです。世界で好まれる食べ物がコオロギになっていけば、熱帯雨林を焼き払って大きな農場が作られる必要もなくなるのかもしれません。

私自身、いなごを食べる文化のある長野県の出身者が行っている昆虫料理教室などに、何度か参加したことがあります。

そのなかでも栄養的にも食べやすさ的にもいいなと思ったのがコオロギでした。味が海老のようで取っ付きやすく、タンパク質を構成するアミノ酸の質も、牛肉より優れているんです」

環境負荷が低く、栄養的にもバランスのいいコオロギ。コオロギ食が世界で選択肢の一つとして選ばれていくことは、長い将来の中で私たちの経済負担を軽くし、そして健康的で文化的な暮らしを守ることに繋がるのです。

食品ロス問題のこと、環境問題のこと。こうやって聞いてみると、自分とも関わりの深いことなのだということが分かりました。

「まずは、無理のない範囲でいいので、賞味期限を気にして棚の奥から食品を手に取るのをやめること、そして冷蔵庫の中に食べ切れないほどの食品を備蓄することをやめることから始めてみてください。

そして、サーキュラーフードを選択肢のひとつとして取り入れてみてください。日本は食料自給率37%の国ですから、今の現状は、世界から食料を奪いながら捨てている状態です。日本で生産されるコオロギを、食文化として受け入れることは、今の状況を少しでも好転させることにつながるでしょう。冷蔵庫のロスを減らすこと。そういう小さな行動が、大きな社会問題の解決に通じていきます。今の暮らしを守るために、ひとり一人の意識が必要です」

Photo_Koji Kanatani Interview & Text_Shiori Mikuni Edit_Yasushi Shinohara

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