企業が取り組む食品ロス削減、そして私たちにできることとは

企業が取り組む食品ロス削減、そして私たちにできることとは

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世界レベルの社会問題となっている食品ロス。食べられる前に捨てられてしまうものや食べられずに捨てられてしまう食品。これらをなくしていくためには、企業も個人も食品ロスの問題について考えなくてはいけません。企業が取り組んでいること、私たち個人でできることの両面から、食品ロス削減に向けての動向をご紹介します。

INDEX

食品ロスとは、食べられるのに捨てられてしまう食品のこと

残りパスタをごみ箱に捨てる人

食べ残しや売れ残り、期限が近いなど、さまざま理由でまだ食べられるのに捨てられてしまう食品を「食品ロス」といいます。日本の食品ロスの量は年間約570万t※1。毎日大型トラック(10t車)約1,640台分の食品を廃棄していることになります。これは、世界で飢餓に苦しむ人々を支援するための食料援助量の1.5倍以上にも及ぶ量で※2、食品ロスは世界の喫緊の課題となっています。

※1…農林水産省および環境省「⽇本の⾷品ロスの状況(令和元年度)」
※2…国連WFP公式サイト

環境負荷・飢餓など多くの問題を抱えている

空の鉢を持っている老人の手

食品ロスは処理の過程で二酸化炭素(CO2)を多く排出したり、焼却後は灰を埋め立てたりするため、環境に負荷を与えます。焼却や埋め立てにかかる多額の費用は、私たちの税金から支払われているという事実もあります。さらに食料自給率が低い日本は、食料の確保を輸入に依存する一方で多くの食料を食べずに廃棄している状況があり、輸入にかかる多額の費用を食品と共に捨てていることに。

世界では毎年、食料生産量の3分の1にあたる約13億tもの食料が廃棄されています。多くの食品ロスを発生させている一方で、貧困で食事に困っている人が多くいる状況にあり、食品ロスは世界的な食の不均衡をもたらしています。私たち一人ひとりが食べ物をもっと無駄なく、大切に消費していく必要があります。
 
※FAO(国際連合食糧農業機関)調べ

合わせてお読みください↓

企業が行なっている取り組み

会議する様子を上から撮った写真

食品ロスはその発生源により「事業系」と「家庭系」の2つに分けられます。ここでは、事業系の食品ロス対策として企業が行なっている事例を紹介します。

廃棄コーヒー豆から作るビール

大手飲料メーカーより、これまで廃棄されていたコーヒー豆をクラフトの原料にし、ビールが作られています。コーヒー豆のフルーティーな香りとほのかな酸味、ビターチョコレートのような苦味が楽しめるビールとして、好評を得ているのだとか。食品ロスを再活用して新たな食を生むこの取り組みは、サスティナブルフード(持続可能な食のあり方)として今後も広がりが期待されます。

廃棄食材で染める服

これは、廃棄予定の野菜に含まれる成分から抽出した染料で染めた衣類を提供するという、ファッション業界による食品ロス対策プロジェクトです。染料として使用するのは、規格外の野菜・コーヒーの出し殻・カット野菜の切れ端など。天然染料を90%以上使用していますが、色落ちしにくく長く楽しめる特徴があり、安全管理も徹底されているので、品質・安全性ともに高水準です。サスティナブルな衣類を販売するブランドとして注目が高まりそうです。

余った給食食材をお取り寄せ

笑顔でお玉を持つ女の子

新型コロナウイルスの流行に伴う休校で、余った給食用の食材を購入し再活用する取り組みも行われています。このキャンペーンは2020年12月末で終了していますが、購入した食材は、子ども食堂などで使われたそうです。

全国の名産品をネット販売しているお取り寄せサイトなどでは、訳あり商品(規格外商品)のコーナーもあります。贈り物ではなく自宅用として、人気が高まっています。

規格外の肉や魚を加工品に

意外に知られていないのが、野菜や果物だけでなく、肉や魚も規格外で毎日廃棄されていること。畜産物には出荷できる体重の基準が決まっており、それに当てはまらない場合は処分されてしまいます。魚も同様で、例えば粒の大きさの揃わない貝なども、セリで売れ残り処分されます。

牛や豚の飼育に伴って温室効果ガスが多く排出されているのに、食品ロスになっているという事実はあまりにもったいないことです。そこで、規格外の肉を再活用する会社が登場。全国の農家さんから規格外の農産物を集め、美味しく食べてもらおうというコンセプトのもと、ハムやソーセージ、テリーヌなどに加工し提供しています。

エコフィードを用いて飼育

カメラを見る豚

残渣(食用として使用されず廃棄される残りかす)から作られた飼料で家畜を育てる取り組みも行われています。この飼料をエコフィード(eco-feed)といい、食品製造副産物(醤油粕や焼酎粕など食品の製造過程で得られる副産物)や売れ残った食品(パンやお弁当など食品として利用されなかったもの)、調理残渣(野菜のカットくずや非可食部など調理の際に発生する部分)、農場残渣(規格外農産物など)があります。

エコフィードの活用は、食品ロスの削減だけでなく、食料自給率アップにもつながっています。

食品ロスを餌に飼育する食用コオロギ

グリラスでは、捨てられるはずだった食品ロスをコオロギの餌として活用しています。コオロギは飼育時の環境負荷が軽く、タンパク質を豊富に含んでいることから循環型の食品「サーキュラーフード」と呼ばれ、持続可能なフードサイクルを実現する食品として研究・開発が進められています。

グリラスではさらに、コオロギの糞は農業用肥料として、脱皮殻は化粧品原料として開発中。余すことなく活用しています。

グリラスの取り組みについてはこちら↓

個人でできる食品ロスの活用アイディア

キッチンの背景に開いた冷蔵庫の近くにいる若い女性

日本における家庭系の食品ロスは、年間約261万t出ています。主な発生要因は、食べ残し・未開封・過剰除去。食品ロスを削減するために、私たちができることには何があるのでしょうか。

※農林水産省および環境省「⽇本の⾷品ロスの状況(令和元年度)」

冷蔵庫や食品庫にある食材を確認する

日を分けて同じ食べ物を買うなど無駄な買い物を防ぐため、買い物に行く前は、冷蔵庫や食品庫にある食材を確認しましょう。買った物をリスト化して冷蔵庫に貼りつけ、無くなったものから順に消していけば、庫内の残数がすぐに分かります。買物前のちょっとした時間に冷蔵庫内を携帯電話で撮影しておくのもよい方法です。

買い物前に献立を立てる

木の机のノートに人の手で食事の計画を書いた写真

買い物前にレシピを決めておかないと、スーパーであれもこれもとカゴに入れてしまい買い過ぎの原因になります。週に1回程度、冷蔵庫の中身やスーパーのチラシを見ながら献立を立ててみましょう。その上で週1回の頻度で買い足し、最終日は冷蔵庫が空になるような献立にすると、使い忘れをなくすことができます。手作りの献立表を冷蔵庫に張っておけば、調理と買い足しがスムーズにいくでしょう。

賞味期限に関する正しい知識を知る

賞味期限を「過ぎたら食べられない期限」と誤解している人もいるのでは。賞味期限とは、「正しい方法で保存した場合、その期限までは美味しく食べられる期限」です。よって期限を数日過ぎたからといって、食べられないわけではありません(ただし賞味期限表示でも、保存状態などによっては痛むことがあるので注意しましょう)。消費期限と混同しがちなのが消費期限です。消費期限は「正しい方法で保存していても、過ぎたら食べない方がよい期限」です。消費期限の場合は過ぎたら食べないようにしましょう。

卵は、生で食べられる期限が記されています。しかし、賞味期限が切れても加熱すれば常温で2か月、冷蔵庫で4か月ほどはもつという研究もあります。余らせがちなバナナ・なす・きのこ・肉・魚は冷凍できる食べ物です。貝類も、冷凍しても解凍せずそのまま調理すればちゃんと開きます。このほかにも、工夫次第で冷凍できる食べ物は多くあります。

※NHKためしてガッテン調べ

食品を長持ちさせる工夫を身につける

未開封のまま冷蔵庫に入れておくとすぐに傷んでしまうもやしは、水を張ったタッパーに入れると1週間近く持ちます。茹でて良く水を切れば冷凍保存も可能。傷みやすい野菜にはトマトもありますが、トマトはキッチンペーパーで包みビニール袋に入れれば、2週間は持ちます。しなびてしまった場合は、ぬるま湯に浸ければ復活します。ぬるま湯で復活させる方法はトマトだけでなく、レタスやキャベツなどにも使えます。

冷蔵保存してもすぐにしなびてしまいがちな小松菜やホウレン草などの葉物野菜は、冷凍保存で長持ちします。小松菜は冷凍すればそのままおひたしになるので、時短調理にも活躍する野菜です。

季節によって旬が変わる野菜や果物は、収穫した直後から鮮度が失われていきます。できるだけ野菜や果物が育っていた環境と同じ環境で保存することが鮮度を保つためのポイントです。野菜の特徴・性質に沿って保存すれば長期での利用が可能となり、家計にも負担を与えません。

冷蔵庫や食品貯蔵庫を整理をする

冷蔵庫内の食品の定位置を決め、取り出しやすい環境にすることで使い忘れを防ぐことができます。特に大型の冷蔵庫では、奥に置いた食品の存在を忘れ期限を大幅に過ぎてしまうことも。このような場合は引き出し収納にし、奥のものまで取り出しやすくするなどでロスを防止できます。

また、冷蔵庫に食品を入れすぎないことも大切なポイントです。安売りのときにまとめ買いすると多くの食品を冷蔵庫に入れることになりますが、食品の定位置を決めたり分類ごとに保存したりすることが難しくなります。食品の入れすぎは電気の消費にもつながりますので、まとめ買いはほどほどにしましょう。

生ゴミを堆肥としてリサイクルする

ニンジンや大根などの野菜の皮は、よく洗えば食べられます。剥かずに食べる他、剥いてから一緒に煮たり、マリネ液に浸けて刻んでサラダに混ぜるなどすると、美味しく食べられます。

それでも余ったものは堆肥にして、家庭菜園などで使用してみましょう。生ごみから作った堆肥を「コンポスト」といいます。コンポストを自作することで環境に優しい菜園を作れるほか、肥料代を節約できるというメリットがあります。

合わせてお読みください↓

食品ロスを防ぐ方法は大きく2つ

スーパーで買い物をする女性

自分たちで食品ロスを防ぐための重要なポイントは、家庭でロスが出ない方法を身につけることと、日頃から食品ロス削減について考えられた製品を買うこと、この2つです。これからはこのポイントを意識して生活してみましょう。

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