
- 食料問題・地球環境
- 2022.02.10
SDGs達成に向けた日本政府の取り組みと達成度について
最近、SDGsという言葉をよく耳にするようになりました。しかし、「SDGs達成しよう!」と言われても、どのような取り組みが行われているのか疑問に感じている人もいるでしょう。
本記事では、日本にフォーカスしたSDGs達成のための取り組みについて紹介します。
SDGsとは

SDGs(Sustainable Development Goals)とは、2015年9月の国連サミットにおいて、加盟国の全会一致で採択された「2030年までに誰一人残さず、持続可能でよりよい世界を目指すための国際目標」のことをいいます。この目標は、17のゴールと169のターゲットから構成され、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載されています。
17のゴールには、2030年までに社会・経済・環境の3方面から世界各国が作り上げるべき姿が書かれています。それぞれのゴールには10個程度のターゲットがあり、2030年までに達成すべき具体的な目標や数値、どのように解決していくかが説明されています。
日本の取り組み

日本は、2030年までにSDGsの17のゴールと169のターゲットの目標を達成するために、具体的にどのような形で取り組んでいるのでしょうか。日本政府が行っているSDGsの取り組みを簡単に紹介します。
実施体制の構築
日本政府はSDGs発足翌年の2016年5月に、総理大臣を本部長、全閣僚を構成員とする「SDGs推進本部」を設置しました。そして、同年の12月にはSDGs推進のための中期戦略である「SDGs実施指針」を策定。同指針では、これまでの日本の取り組みを分析し、17のゴールに対し日本用に再構成した8つの優先課題と主要原則を決めています。
また、SDGs実施指針を基にして、政府は全省庁に向けた具体的な施策を盛り込んだ「SDGsアクションプラン」を定めています。これを半年に一度のペースで更新し、国内の実施と国際協力の双方からSDGsを推進しています。
さらに、官庁と民間がともに手を取り合ってSDGsを進めていくために、民間セクター・NPO・NGO・有識者・国際機関・各種団体など広範囲な人達が集まる「SDGs推進円卓会議」を開催。意見交換を行って政府の政策に反映するようにしています。
SDGs実施指針
SDGsの「持続可能な開発のための2030アジェンダ」では、持続可能な開発を推進するためのキーワードとして、5つのPを掲げています。5つのPとは、人間(People)・地球(Planet)・繁栄(Prosperity)・平和(Peace)・連帯(Partnership)のことです。これによりSDGsが目指す世界をイメージしやすく表現しています。この5つのPに対応するように、日本ではSDGs実施指針で「8つの優先課題」を設定し、日本が特に積極的に注力すべき課題を定めています。
8つの優先課題の内容は、以下のとおりです※。
①あらゆる人々の活躍の推進
②健康・長寿の達成
③成長市場の創出、地域活性化、科学技術イノベーション
④持続可能で強靱な国土と質の高いインフラの整備
⑤省・再生可能エネルギー、気候変動対策、循環型社会
⑥生物多様性、森林、海洋等の環境の保全
⑦平和と安全・安心社会の実現
⑧ SDGs実施推進の体制と手段
※持続可能な開発目標(SDGs)実施指針の概要
SDGsアクションプラン
SDGsアクションプランでは、SDGs実施指針で定められている8つの優先課題を解決するために、具体的な施策を記載しています。この内容は固定的なものではなく、2017年12月に初版が公表されてからは、半年に1度のタイミングで改訂版が発表されています。
SDGsアクションプランでは、「ビジネスとイノベーション ~SDGsと連動する『Society5.0※』の推進」「SDGsを原動力とした地方創生、強靭かつ環境にやさしい魅力的なまちづくり」「SDGsの担い手としての次世代・女性のエンパワーメント」の3本の柱を設け、日本のSDGsの方向性を示しています。
※Society5.0: 経済発展と社会的課題の解決を両立させた人間中心の社会(Society)で、我が国が目指すべき未来社会の姿。
ジャパンSDGsアワード
SDGs達成のため、2017年6月のSDGs推進本部の会議にて「ジャパンSDGsアワード」の創設が決定されました。「ジャパンSDGsアワード」とは、SDGs達成に向けて、優れた取り組みを行っている企業や団体などを表彰する場です。NPO・NGO・民間セクター・有識者・国際機関など、さまざまな関係者が集まる選考委員会の意見によって表彰者が決められています。
その内容は、最も優れた1案件がSDGs「推進本部長表彰」として内閣総理大臣から授与され、その他4案件は、「副本部長表彰」として官房長官と外務大臣から授与されます。また、特筆すべき功績があったと認められた企業や団体には、「特別賞」が付与される場合があります。
SDGs未来都市
2018年から日本では、SDGsの達成に向けた優れた取り組みを提案・実行する都市や地域を、新しい時代の流れを踏まえた「SDGs未来都市」に選定しています。また、SDGs未来都市の中でも特に優れた提案を行った自治体に対し、「自治体SDGsモデル事業」を認定しています。
この取り組みによって、SDGsを原動力とした民間と自治体の連携による地方創生が推進され、持続可能なまちづくりが成功することを目指しています。2021年までの4年で、これまでにSDGs未来都市は124都市、自治体SDGsモデル事業は400事業が選ばれています。
各省庁が推進するSDGsの取り組みの事例

日本ではそれぞれの省庁が中心となり、SDGsを企業や国民に呼び掛けながら、目標達成に向けて積極的に行動しています。ここからは、それぞれの省庁が推進するSDGsの取り組みと事例をみてみましょう。
私達ができるSDGsの取り組みはこちら↓

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「持続可能な開発目標(SDGs)」は、世界を変えるための壮大な目標で、実現には世界中の協力が必要です。「とても自分は関わることはできない」「実感がわかない」そう思うこともあるかもしれません。...
消費者庁
消費者庁ではSDGsの目標を達成し、安全・安心で豊かに生活することができる社会を実現するために、「消費者基本計画」の策定を行っています。消費者基本計画には以下の6つの内容が盛り込まれています※。
①消費者の安全の確保
②表示の充実と信頼の確保
③適正な取引の実現
④消費者が主役となって選択・行動できる社会の形成
⑤消費者の被害救済、利益保護の枠組みの整備
⑥国や地方の消費者行政の体制整備
※消費者庁 消費者政策の学び
また、SDGsの17の持続可能な開発目標に基づいて、消費者庁の先導により以下の具体的な取り組みが実行されています※。
①エシカル(倫理的)消費普及・啓発活動
②子どもの事故防止
③食品ロスの削減
④高齢消費者・障害消費者見守りネットワーク協議会
⑤消費者志向経営(サステナブル経営)の推進
⑥公益通報者保護制度
※消費者庁パンフレット(2021年4月作成)様々な取組
環境省
環境省では「すべての企業が持続的に発展するために」という題目で、持続可能な開発目標(SDGs)活用ガイドの作成を行っています。その目的は、日本のすべての企業がガイドを活用しながらSDGsに取り組むことで、経営リスクを回避し、新しいビジネスチャンスを掴んで持続可能な企業へと進展していくことにあります。
この活用ガイドでは、既にSDGsに対し先駆的に取り組んでいる企業の事例などをわかりやすく紹介。これからの企業に必要なことなど経営の道しるべとなるヒントを与えています。また、既に何らかの取り組みを行っている企業に対しては、さらなる取り組みの充実や発展につながるような内容も盛り込まれています。
日本のSDGs達成状況

2021年にSDGsが発表したレポートによると、日本のSDGs達成順位は165の対象国の中で18位という結果が出ています。日本が最上位帯にランクインできない理由として、まずは国会議員の女性の比率が低いことや、労働格差による貧困問題が改善されていないことなどが挙げられます。また、消費や環境問題の観点からは、食料や材料の廃棄問題や化石燃料によるCO2の排出問題、再生エネルギー比率の低さなどの問題がランクを下げている原因です。
SDGsの17の目標のうち、日本が目標達成したと評価されたものと大きな課題が残っていると評価されたものは以下のとおりです※。
【目標を達成したと評価されたもの】
・目標4:質の高い教育をみんなに
・目標9:産業と技術革新の基盤をつくろう
・目標16:平和と公正をみんなに
【大きな課題が残っていると評価されたもの】
・目標5:ジェンダー平等を実現しよう
・目標13:気候変動に具体的な対策を
・目標14:海の豊かさを守ろう
・目標15:陸の豊かさも守ろう
・目標17:パートナーシップで目標を達成しよう
このように、日本のSDGsの取り組みは、既に目標達成しているものもいくつかありますが、未だ大きな課題が残っていて、すぐには目標達成ができないであろうものも多く存在している状況です。
※外務省 JAPAN SDGs Action Platform
SDGsの達成は日本人一人ひとりの努力が必要

日本政府や各省庁では、企業と手を組んでさまざまな問題に取り組みSDGsを達成しようと試みていますが、まだまだ解決できない問題も多く残っています。そのため、今後はさらに多方面からの協力を得ることも必要です。
SDGsの目標を達成するためには国や企業に任せるだけでなく、環境問題や人権問題など、さまざまな社会問題を解決していこうとする一人ひとりの意識が大切です。これからは、個人でもできる範囲内で、少しずつSDGsのために行動してみてはいかがでしょうか。