カーボンニュートラルとは。脱炭素を目指す国・企業・個人の取り組み

カーボンニュートラルとは。脱炭素を目指す国・企業・個人の取り組み

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今、世界中の国々が一丸となってカーボンニュートラルという取り組みを進めています。日本でも「2050年カーボンニュートラル宣言」をし、取り組みを進めています。

今回は、カーボンニュートラルの定義から、カーボンニュートラルを目指す必要性、実際の取り組みについてみていきます。

INDEX

カーボンニュートラルとは

カーボンニュートラルは、地球温暖化の原因となっている二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出量を、実質ゼロにすることです。

温室効果ガスは、石炭や石油、天然ガスなどの炭素を含む化石燃料を燃焼させることで発生します。しかし、電力などのエネルギーを得るためには化石燃料を燃やすため、温室効果ガスの排出量をゼロにするのは、現実的ではありません。そのため、排出せざるを得ない二酸化炭素を吸収したり除去したりすることで、差し引きゼロにしようという考え方がカーボンニュートラルです。

日本政府は、2020年10月に「2050年を目途にカーボンニュートラルを目指す」と表明しました。2021年1月の時点で、124ヵ国と1地域が2050年までにカーボンニュートラルの実現を表明しています。

なぜカーボンニュートラルを目指す必要があるのか?

近年、地球温暖化に起因する災害が増加しており、甚大な人的被害や経済損失などをもたらしているため、地球温暖化対策であるカーボンニュートラルの実現は非常に重要です。

19世紀の産業革命で多くのエネルギーを消費するようになってから、世界の平均気温は0.75度上昇し、日本だけでは1.26度も上昇しています※。産業革命以前の平均気温から2度上がると、大規模な水不足や感染症の拡大など、さまざまな悪影響が発生すると懸念されており、状況は深刻です。

一方、近年ではカーボンニュートラルを目指すことは、経済成長のチャンスだと捉えられています。温室効果ガスを削減する新技術の開発に投資をしたり、カーボンニュートラルに関する事業を立ち上げ、雇用創出による経済活性化をねらったりと、世界中のビジネスや金融市場に大きな変化が見られます。

※気象庁気象研究所資料より

実現に向けた国の取り組み

日本では、「改正地球温暖化対策推進法」が2021年3月2日に閣議決定、同年5月26日に成立しました。カーボンニュートラルの実現を法律に明記することで、国が継続して実施していくことが明確になりました。そのため、自治体や企業なども継続してカーボンニュートラルの実現に取り組みやすくなっています。

また、環境省は2050年までのカーボンニュートラル実現には、2030年までの10年間が重要だと発表。2021年4月22日には、2030年度の温室効果ガス排出量46%削減を表明しました。2030年までに脱炭素先行地域づくりを進め、各地域で次々と脱炭素が実現する「脱炭素ドミノ」を生み出す方向性を示しています。

脱炭素ドミノ実現の施策には、以前からある「冷暖房の温度設定の適正化」「クールビズ・ウォームビズ」の他、「再生可能エネルギー由来の電力への切り替え」や「高効率の家電・給湯器」「電気自動車(EV)への乗り換え」など最新技術やIT技術も活用されます。

企業のカーボンニュートラルへの取り組み

2021年2月に経済産業省は「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を発表しました。この戦略では、「カーボンニュートラルに向けた投資促進税制の創設・研究開発税制の拡充と、経営改革に取り組む企業に対する繰越欠損金の控除上限を引き上げる特例の創設を講じる」としています。そのため、カーボンニュートラルに取り組む企業に税制の優遇が図られることが予想されています。

ここからは、企業が既に実施している取り組み事例を紹介します。

カーボンニュートラルLNG

カーボンニュートラルLNGとは、二酸化炭素を実質的に排出しない液化天然ガスのことです。本来、天然ガスの採掘から燃焼に至るまでの間に、温室効果ガスが発生します。それを植林や環境保全プロジェクトへの貢献で生まれた森林が吸収し、排出量全量を相殺することで、二酸化炭素排出量ゼロとみなすという仕組みです。

2021年3月にカーボンニュートラルLNGを調達し供給する東京ガス株式会社と、それを購入する企業からなるCNLバイヤーズアライアンスが設立されました。カーボンニュートラルLNGの認知拡大・市場での評価向上などの取り組みを予定しています。

バイオディーゼル燃料の普及

バイオディーゼルは、菜種油などの植物油や使用済み天ぷら油など廃食用油などから製造されるディーゼルエンジン用のエコロジー燃料のことです。地域で出される廃食用油を回収してバイオディーゼル燃料を作り、使用する地産地消エネルギーで、さまざまな企業が製造・販売に取り組んでいます。

バイオディーゼル燃料の燃焼により排出される二酸化炭素量は、化石燃料に比べて非常に少ないため、バイオディーゼル燃料の普及により二酸化炭素削減が期待できるといわれています。そのため、化石燃料の代替燃料として注目されています。

ゼロカーボン・スチールの開発

一般社団法人日本鉄鋼連盟では、鉄鋼製造過程で水素ガスを使い、二酸化炭素を発生しないゼロカーボン・スチールの研究・開発がなされています。

従来の方法で鉄鉱石から鉄を製造するときには、鉄鉱石に含まれる酸素を引きはがす「還元反応」を起こすために、化学燃料に含まれる炭素を用いています。この製鉄方法では、二酸化炭素が発生してしまうのです。

日本国内の産業部門の中で、最も多く二酸化炭素を排出しているのが鉄鋼業です。そのため、ゼロカーボン・スチールが開発されれば、産業による二酸化炭素排出量を大幅に削減できるでしょう。

カーボンリサイクル・コンクリートの開発

大成建設株式会社は、工場から排出される二酸化炭素を資源としたカーボンリサイクル・コンクリート「T-eConcrete/Carbon-Recycle」を開発。

通常、コンクリートを作る場合、多くのに二酸化炭素を排出しますが、T-eConcrete/Carbon-Recycleは、工場の排気ガスなどから回収した二酸化炭素を、原料とした炭酸カルシウムの粉末で作ることで、コンクリート内部に多量の二酸化炭素を閉じ込めます。そのため、二酸化炭素の排出をマイナスにできるという仕組みです。

これにより、従来のコンクリートの製造過程で排出される二酸化炭素量のマイナス120%を実現しました。

グリーンボンドの発券

グリーンボンドとは、地球温暖化などの環境問題解決に貢献する事業・グリーンプロジェクトの資金を調達するために発行する債券のことです。2008年、世界銀行グループの国際復興開発銀行が初めて発行して以来、発行が増加、市場規模は拡大を続けています。

グリーンボンドの発行は、社会的な支持を集められるというメリットがあります。環境問題が注目されている今、グリーンボンドの発行は企業のイメージアップにも有効です。環境問題に注目するEGS投資家からの支持も得られるでしょう。また、グリーンボンドに投資することで、自身のイメージアップにもつながります。

個人でもできるカーボンニュートラルへの取り組み

個人の行動によっても、カーボンニュートラル実現に貢献が可能です。

例えば、電気やガスの供給には多くのエネルギーを要し、二酸化炭素を発生させます。家庭から排出されている二酸化炭素は、暖房・冷房で約18.5%、照明・電化製品で29.8%です※。そのため、電気やガスの無駄遣いがないか見直し、電気をこまめに消す・エアコンの使用を控えるといった対策をしてみましょう。

また、ゴミを減らすことも重要です。例えば、買い物のときにマイバッグを使用してレジ袋は断る、野菜は皮ごと食べたり食べ残したりしないことで食品ロスの削減をする、長く着られる服を選ぶといった方法があります。1人ひとりの行動で、家庭ゴミは大幅に削減できるでしょう。

※国立環境研究所調査より

食品ロスについて詳しく知りたい人はこちらをチェック↓

カーボンニュートラルの実現のためには地球人全員の協力が必要

カーボンニュートラルの実現のためには、政府・自治体・企業、そして国民1人ひとりによる、温室効果ガスの発生を抑制する努力が必要です。

このまま温室効果ガスの排出量が増え続けると、2070年までに気温の上昇幅は7.5度となり、35億人が住む場所が灼熱にさらされ※、住むことができなくなると予測されています。そのため、カーボンニュートラルの実現は一刻を争うといえるでしょう。

未来の生活を守るための取り組みは、少しの工夫でできるものばかりです。まずは、自分ができることを1つでもよいので、今日から始めてみましょう。

※総合地球環境学研究所調査より

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