
- 食料問題・地球環境
- 2022.02.10
フードマイレージって何?日本の現状と問題解決のためのポイントとは?
「フードマイレージ」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。フードマイレージは、食料が私達の手元に届くまでに環境に与える負荷を表す指標の1つです。
今、日本のフードマイレージが高いことが問題となっています。本記事では、フードマイレージが高い日本にどのような問題があるのか、現在考えられている解決方法をお伝えします。
フードマイレージとは

フードマイレージは食料輸送における環境負荷を試算する指標
フードマイレージは、食料が消費者にとどくまでの距離を測り、環境へどのくらいの負荷を与えているのかを試算する1つの指標です。食料の量と輸送距離を掛け合わせて算出します。フードマイレージの数字が高いほど、遠くの産地から食料を輸送していることが分かります。
<計算式>
フードマイレージ=食料輸送量(重さ)×輸送距離
※フードマイレージの単位は、t・km(トン・キロメートル)、食料輸送量はt(トン)、輸送距離はkm(キロメートル)。
日本は食料の多くを海外からの輸入に頼っています。そのため、自給自足ができている国と比較すると輸送距離が長くなり、結果としてフードマイレージの値も高くなっています。
フードマイレージの由来
フードマイレージという発想は、英国の消費者運動家であるティム・ラング氏のフードマイル(food miles)という概念が元になっています。
1990年代に英国のサステインという政府団体が中心となって、「フード・マイルズ運動」といわれる市民運動が展開。これは、「食料を輸送するには多くのエネルギーを消費する。環境のためには、なるべく近い産地の食料を消費しよう!」という運動で、世界中に呼び掛けられました。
フードマイレージの数値が高いと何が悪い?

フードマイレージの数値は、できるだけ低いほうが良いといわれています。それでは、なぜ数値が高いと問題なのでしょうか。
フードマイレージは食料輸送量 × 輸送距離で算出されるため、遠くの産地から多くの食料を運んでくるほど数値が高くなります。つまり、フードマイレージの数値が高いということは、たくさんの燃料を使って遠くの食料を消費者の元に運んできていることになります。フードマイレージが高いほど、二酸化炭素(CO2)の排出量の増加や環境汚染、地球温暖化の加速につながっているのです。そのため、フードマイレージの値をできる限り低くすることが求められています。
フードマイレージが高い日本の現状

日本は、国内で流通している食料の約6割を輸入に頼っているため、他の先進諸国と比較するとフードマイレージの数値はかなり高くなっています。ここでは、日本のフードマイレージが高い理由を食料事情とともに詳しく解説します。
日本は食料自給率が低い
食料自給率とは、国内に供給されたすべての食料のうちの自国で生産された食料の割合のことを指します。日本の食料自給率は、2019年の農林水産省の調査によると、カロリーベースで38%というデータが出ています。これは62%を海外からの輸入作物に頼っていることになります。
同年のカナダの食料自給率が255%、オーストラリアが233%、アメリカが131%という数値と比較すると、日本の食料自給率がかなり低いことが分かります。
北米や豪州など食料自給率が高い国では、広大な国土を活かした大規模農業が行われていることが多く、一度に膨大な量の農産物を生産することができます。自国で消費される以上の食料を生産、輸出を行うことで、食料自給率が100%を越えています。
しかし、異常気象や家畜伝染病の流行、政情不安などのさまざまな要因によって、輸入元の国の生産量が大幅に減少した場合、その作物や家畜の輸出が制限される可能性があります。輸入元の国でトラブルが発生すると、日本で食料の価格高騰や不足が起きるリスクがあるのです。
島国であるため輸送距離が長くなりやすい
日本は多くの農畜産物や加工食品を、さまざまな国から輸入しています。日本は島国であり、食料を輸入する場合は飛行機や船による長距離輸送になるため、排出される二酸化炭素量が問題になっています。
輸入に伴う日本の二酸化炭素排出量は、年間で1,690万tという試算が出ています。これは国内生産の食料品(輸入食料品も含む)の輸送で排出される二酸化炭素量(試算で900万t)の1.87倍にもなります※。この値は、1人あたりで計算すると130kgにもなり、地球環境を守るためにも早急なフードマイレージ対策が必要であることが分かります。
※農林水産省より
食生活が欧米化している
高度成長期を迎える昭和30年頃から日本では欧米化が進み、それに伴って肉やパン、パスタ、揚げ物などの欧米食の消費量が増加しました。食の欧米化は、肥満や成人病の原因になりやすく、健康面で問題があるとされています。
これらの食品のほとんどは、パンやパスタの原料である「小麦粉」や、油脂類の原料である「大豆・菜種」などの輸入食材を使って作られています。つまり、食が欧米化するということが、食材を大量に輸入することにつながっているのです。
フードマイレージの問題を解決するために意識したいポイント

フードマイレージの値を低くし、二酸化炭素排出量を減少させるためには、食料の輸入をできるだけ減らすことが必要です。しかし、この問題を解決するためには、国の取り組みとともに個人ではどのようなことを意識すればいいのでしょうか。ここでは、具体的なポイントを紹介します。
国産の食料を購入する
日本では、輸入食品のおかげで毎日さまざまな種類の料理を食べることができ、豊かな食生活を送っています。しかし、地球環境のためにはフードマイレージの値を低くし、食料を輸入に頼らずに国内の食料自給率を高める対策が必要です。
今の生活から急に輸入食品を取り除くことは難しいですが、まずは消費者1人ひとりがなるべく国産の食材を選んで購入していくことからスタートしてみましょう。国産食材の需要を底上げすることで、日本の農産物の生産力を高めることが期待されます。
地産地消に取り組む
フードマイレージを減らすには、企業と個人が「地産地消」に対し積極的に取り組むことが大切です。地産地消とは、「地元で生産されたものを地元で消費する」という考え方。
企業が地産地消の原料を大量に扱うことで、企業単位で国内生産の需要を大きくアップさせることができます。個人でも地元で生産された食料を積極的に購入し、輸送距離を最短で消費するように心がけることで、フードマイレージの値を低くすることができるでしょう。消費者には、新鮮で味が良く、栄養価も高い地元農産物を食べることができるという利点もあります。
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6次産業の商品やサービスを利用する
近年、1次産業(生産業)・2次産業(製造加工業)・3次産業(サービス業)を一連で行い、それぞれを組み合わせた形の新しい産業「6次産業」を形成しようという取り組みがあります。6次産業を進めることで農産物の付加価値を向上させて、農家や地域の伝統文化・風土の保全・地元の活性化を目指しています。
6次産業の具体的な例としては、農家が直接経営し、地元の食材を使って調理・加工したものを提供する農家レストランや農家民宿などがあります。農家は、地元の農産物を自分のところで消費でき、市場に出荷するよりも利益が上がります。さらに、地産地消も促進が可能で、輸送による二酸化炭素がほとんど排出されないため、フードマイレージ問題の解決にも貢献できます。
国産・地元の食を選び、日本のフードマイレージ改善へ

日本のフードマイレージの数値は、世界的に見ても大きいことが分かっています。フードマイレージの問題を解決するためには、消費者が輸入食材だけではなく、国産や地元産の食材を進んで購入し、消費することが大切です。
とはいうものの、安価な外国産の食材につい手が出てしまうこともあるかもしれません。そこでまずは健康のために、現在の食事内容について「バランスが取れているか?」「欧米化した食生活ばかりではないか?」という観点を見直してみましょう。食生活を見直すことで、自然と新鮮で栄養価の高い国産の食材を使った料理を増やせるかもしれません。まずは、少しずつ国産の食材を取り入れて、できることから始めてみてはいかがでしょうか。