
- 食料問題・地球環境
- 2022.03.14
ソーシャルグッドとは? 注目されるようになった背景&企業が取り組むメリット
2010年頃から注目を集めている「ソーシャルグッド」。海外ではソーシャルグッドはトレンドにもなり、その考え方は浸透してきていますが、日本ではまだ馴染みが薄いもの。とはいえ、SDGsやESG投資といったサスティナビリティを追求する取り組みが国内でも浸透するにつれ、企業経営にもソーシャルグッドな視点が求められるようになってきています。そんなソーシャルグッドの考えや取り組みについて紹介します。
ソーシャルグッドとは?

ソーシャルグッド(Social Good)とは、「社会に良いインパクトを与える」という意味で、社会貢献度の高い活動や製品、サービスのことをいいます。ソーシャルグッドという言葉が広まった背景には、2015年9月に開催された国連サミットにおいて「SDGs(持続可能な開発目標)」が採択されたことにより、サスティナビリティ(持続可能な社会の実現)を追求する取り組みが世界で広まったことがあります。
現在私たちが生きる社会は、地球環境や地域コミュニティなどの課題を抱えています。ソーシャルグッドはこれらに対し良いインパクトを与え、解決する取り組みとして近年注目を集めています。身近な例には、大手コーヒー販売店がプラスチック製ストローを紙製のストローに変えたことなどがあります。
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CSR(企業の社会的責任)からCSVへ変化している

かつて日本は、重化学工業化が進んだ高度経済成長期において引き起こされた環境汚染から、四大公害病を発生させました。経済活動を優先させたがために起こったこれら負の歴史を教訓に問われ始めたのが「CSR(Corporate Social Responsibility)」、つまり企業の社会的責任という考え方です。
しかし近年はCSRだけでなく、事業そのものがソーシャルグッドであるという「CSV(Creating Shared Value)」の概念も生まれています。「社会」と「企業」が同じ目的意識を持ち、共に問題解決に向かうことで、ビジネスにおける有利性を高める手段の一つとして捉えられているのです。
ソーシャルグッドが注目されている背景

ソーシャルグッドが注目されているのには、どのような背景があるのでしょうか。
1.多様性を尊重した社会を実現するため
ライフスタイルの多様化が進む現代では、性別・人種・国籍だけでなく、価値観や思想などの差別をなくし、お互いの個性を尊重し認めていく世の中に変化する必要があります。昔は一般的に使われていた言葉も今では差別表現とみなされる場合があり、さまざまな人に配慮した言動が求められています。また、性的少数者 (セクシャルマイノリティ) であるLGBTという言葉の広がりも、多様な性の在り方が社会に浸透していることを示しています。
2.限られた資源を守るため
地球資源は限りあるもので、永遠に存在しません。消費し続ければ遅かれ早かれ枯渇します。世界の人口は2025年に79億人に達すると言われており※、このままでは地球エネルギーだけでなく、食料も不足することが懸念されています。サスティナブルな社会の実現のためにも、資源を奪い合うのではなく循環させて使うことが求められます。
※…総務省統計局「世界の人口,日本の人口」
3.食料問題解決のため
発展途上国の一部では飢餓が深刻化している一方で、日本では本来食べられるのに捨てられてしまう「食品ロス」が社会問題となっています。日本の食品ロスは年間570万tといわれ、これは、世界中の飢餓で苦しむ人々を支援するための食料援助量の1.4倍に相当します※。この背景には売上至上主義があり、利益を追及するあまり昨今頻発する異常気象や枯渇が懸念される自然エネルギー問題などに派生しています。
※…消費者庁「食品ロスについて知る・学ぶ」
4.ビジネスのライフサイクルが短命になっているため
これまでのビジネス環境は、国対国・企業対企業・個人対個人で、熾烈な覇権・市場・ポジション争いを繰り広げてきました。しかし社会全体が成熟化していくと、入り込める市場は少なくなります。たとえ見逃されやすい小規模の事業で地位を築いたとしても、すぐに競合他社が参入し一般化する状況になります。ビジネスのライフサイクルの短命化が顕著になってきているのです。
そこで、キーワードとなるのが「共創」です。共創とは、「自分さえ良ければいい」「子孫の未来はどうでもいい」ではなく、「自分だけでなく、子孫や地域社会の人々すべてが幸せになり、地球環境にも優しい社会を実現するためにはどうしたら良いか」と考えることです。
近年世界全体で目指している循環型社会という言葉があるように、自分だけが得して他者が損をするのではなく、周囲のために自分自身が経済を回すという姿勢が、ソーシャルグッドな活動につながります。
日本のSDGs達成度は世界で17位

さまざまな機関と連携・協働し、持続可能な社会を実現するための活動に取り組む団体SDSN(持続可能な開発ソリューション・ネットワーク)が2020年に発表した調査結果によると、日本のSDGs達成度は世界で17位で、前年の15位から2つランクダウン※。日本では、特に下記5つの取り組みが進んでいないと評価されており、改善が求められています。
目標5:ジェンダー平等
目標13:気候変動
目標14:海の生物多様性
目標15:陸の生物多様性
目標17:パートナーシップ
※…SUSTAINABLE DEVELOPMENT SOLUTIONS NETWORK「Sustainable Development Report 2020」
企業がソーシャルグッドに取り組むメリットとは

1.企業イメージの向上
ソーシャルグッドにより企業のイメージや評判が高まると、経営やマーケティングなどに良い影響をもたらします。ソーシャルグッドは単に企業のブランド力を強めるだけでなく、意識の高い優秀な人材を確保することにもつながります。また。取引先が好印象を持ったことでスムーズに取引ができるようになり資金調達がしやすくなるなど、企業の成長を後押しするさまざまな効果が期待できます。
2.企業の認知度向上
ソーシャルグッドの活動は、これまでかかわってこなかった新たな社会との接点を増やします。企業はソーシャルグッドを通して社会貢献活動に注力する企業としてアピールすることができるので、ソーシャルグッドに関心がある消費者から支持を得ることもできます。また、今まで認知されていなかった消費者からも自社を知ってもらうことができ、企業の認知度向上も期待できます。
3.従業員のモチベーションの向上
ソーシャルグッドに注力する企業の従業員には、自分の仕事が社会の役に立っているという意識が芽生えます。このような仕事における自己肯定感は、企業への帰属意識や仕事への誇りを生み、モチベーションを高めることにつながります。そしてこれは従業員だけでなく、家族や知人などにも良い影響を与えるでしょう。また、取引先などからも好印象を持たれている企業で働くことは仕事の効率化にもつながり、結果的に働きやすい労働環境の形成も期待できます。
消費者の購買行動も変化している

これまでの「いい買い物をした」という消費者の購買行動は、品質の良い商品やサービスを安価で手に入れることでした。「お買い得」とは、「得をする側と損をする側」という消費者と企業の二者として捉えられてきましたが、この構造は現在、複雑に変化しています。
近年では、「お買い得商品を買う」というよりも「お買い得であることにかかわらず、よく考えてから買う」という人が増加しています。つまり企業と消費者が同じ方向を向き、より良い社会を築こうとする消費社会の在り方を、企業だけでなく消費者も模索しているのです。
自らの消費行動が無関係の人や社会に悪影響を及ぼすことを懸念することはつまり、消費行動で他者や社会に良い影響をもたらしたいということ。このようなソーシャルグッドの考え方は、消費者の間で浸透しつつあります。
これからは買い物の選択肢を変え、よりよい社会に向けて貢献してみてはいかがでしょうか。
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