
- 食料問題・地球環境
- 2022.03.27
脱プラスチックの必要性とは。循環型社会を目指して現状と課題を理解しよう
プラスチック製造や利用を減らすことを目指す、脱プラスチック。現在、世界的に脱プラスチックの意識が高まっていますが、具体的に何のために必要なのか分からないという人もいるかもしれません。今回は脱プラスチックに取り組むべき理由やメリット、日本の現状などを解説します。
INDEX
- 脱プラスチックとは
- プラスチック製品の使用を減らすこと
- 循環型社会に向けての世界的な課題
- 脱プラスチックの必要性・取り組むべき理由
- 深刻化する海洋汚染に対応するため
- 土壌の汚染に対応するため
- 地球温暖化や大気汚染に対応するため
- 脱プラスチックを進めるメリット
- 環境の保護につながる
- 企業イメージの向上が見込める
- 経営リスクを回避し、ビジネスチャンスを拡大できる
- 脱プラスチックを目指す日本の現状
- 日本のプラスチック利用状況と課題
- 日本国内の脱プラスチックに向けての取り組み①自治体
- 日本国内の脱プラスチックに向けての取り組み②企業
- 脱プラスチックに向けて私たちにできること
- ルールを守ってゴミを捨てる
- 繰り返し使えるアイテムを積極的に利用する
- 脱プラスチックの必要性や課題を知り、循環型社会を目指そう
脱プラスチックとは

近年、レジ袋の有料化など脱プラスチックへの動きが活性化しています。まずは脱プラスチックについて解説します。
プラスチック製品の使用を減らすこと
脱プラスチックとは、プラスチック製品の製造や使用をできる限り削減することです。特にレジ袋や使い捨てカップといった製品の使用をやめたり、製品に使うプラスチックを他の素材に替えたりする動きのことをいいます。
循環型社会に向けての世界的な課題
プラスチックは耐久性が高く、加工しやすいことから広く普及してきました。一方で、自然分解されないため、環境に大きな影響を与えることが問題になっています。脱プラスチックは循環型社会に向けての世界的な課題です。
2015年に国連でSDGs(持続可能な開発目標)が採択、2019年はプラスチック資源循環戦略の策定、同じくG20大阪サミットでの大阪ブルー・オーシャン・ビジョンの提言など、世界で大きな動きが起きています。
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脱プラスチックの必要性・取り組むべき理由

海洋汚染や大気汚染といったプラスチックが環境に与える影響を中心に、脱プラスチックに取り組むべき理由を解説します。
深刻化する海洋汚染に対応するため
プラスチックが環境に与える影響で、特に大きなものが海洋汚染です。海を漂うゴミ(海洋ゴミ)のうち、プラスチックゴミは7割にも上ります。プラスチックゴミは波や風、紫外線にさらされて直径が5mm以下のプラスチック粒子「マイクロプラスチック」となり、さまざまな影響をもたらします。
まずは海への影響です。海水は100%何も混ざっていない水というわけではありません。農薬やオイル類などの汚染物質がごくわずかながら含まれている状態です。プラスチックがこのような汚染物質を吸着しながら広い範囲を移動することにより、海洋汚染を広げてしまう恐れがあります。
次に海洋生物と人体への影響です。マイクロプラスチックを食べた魚の体内に、プラスチックに含まれる有害な汚染物質が蓄積され、炎症反応や摂食障害を起こす可能性があります。そして汚染物質を体内に含んだ魚を人間が食べると、免疫力や生殖能力に悪影響を及ぼしたり、がんが発生したり、さまざまな健康被害につながるともいわれます。
土壌の汚染に対応するため
プラスチックゴミは土の中に埋めて処分される場合もあります。しかし、土壌に含まれる化学物質などとプラスチックが反応し、汚染を引き起こすことも。また、廃棄されたプラスチックはマイクロプラスチックとなります。プラスチック成分を含んだ土壌が影響し、作物にもマイクロプラスチックが入り込む可能性もあり、人体への影響が懸念されます。
地球温暖化や大気汚染に対応するため
プラスチックゴミを焼却処分する際に出る大量の二酸化炭素は、地球温暖化につながる温室効果ガスです。プラスチックゴミの量に比例して二酸化炭素の排出量も多くなります。
また、プラスチックは低温で燃やすと有害物質であるダイオキシンが発生します。さらに、近年の研究でプラスチックが劣化していく途中でメタンガスが発生することが明らかになりました。メタンガスも温室効果ガスの1つで、同じ重量での比較だと二酸化炭素より強い温室効果を持ちます。プラスチックゴミを放置することで、地球温暖化や大気汚染が進むことが考えられます。
脱プラスチックを進めるメリット

脱プラスチックに取り組むことは、個人はもちろん企業にとってもメリットがあります。ここでは、脱プラスチックを進めることで得られる具体的なメリットを見ていきます。
環境の保護につながる
前述の通り、プラスチックゴミによる海洋汚染、土壌汚染や地球温暖化・大気汚染といった環境問題が深刻化しています。環境の保護につながるのは脱プラスチックの大きなメリットです。また、プラスチックを減らすことにより製造過程で必要な資源の枯渇を防げるというメリットもあります。
企業イメージの向上が見込める
環境問題はニュースなどで取り上げられることが増え、消費者にとって身近な話題になっています。環境問題に取り組むことは、今や当たり前という認識が広まりつつあると言えるでしょう。
環境問題に取り組むことで消費者の信頼を得られ、企業のイメージアップにつながります。例えば、エコ容器を導入した事例を発信すれば、この取り組みが広告になります。エコ容器にかかるコスト以上の集客効果や大きな収益を見込めます。
経営リスクを回避し、ビジネスチャンスを拡大できる
環境問題に関心が高まり、大手企業だけでなくさまざまな規模や業種の企業が環境問題へ取り組んでいます。環境保護やSDGsへ取り組まなければ、消費者から非難されたり、信頼を失ったりするだけでなく、ビジネスパートナーを喪失することにもなりかねないでしょう。環境問題に取り組むことが、経営リスクの回避にもつながります。
いきなりすべての容器をエコ容器に切り替えたりすることは難しいため、できることから取り組むことが大切です。環境問題に取り組む姿勢で、新たな事業や取引先の獲得につながり、ビジネスの拡大が期待できます。
脱プラスチックを目指す日本の現状

世界的に脱プラスチックの気運が高まっていますが、日本国内はどのような状況なのでしょうか。脱プラスチックの日本の現状を解説します。
日本のプラスチック利用状況と課題
国連環境計画(UNEP)2018年発表の報告書によると、日本人1人あたりのプラスチック生産量は世界2位です※1。その一方でリサイクルといった取り組みが進み、ゴミとしての排出量は少なくなっています※2。
2018年の経済協力開発機構(OECD)加盟国の一般廃棄物の排出量は年間7.0億t
1人当たりの排出量OECD加盟国平均は538kg
日本の年間1人当たりのゴミ排出量は336kg
従来、日本国内のプラスチックゴミの半分は中国に輸出して処分されてきました。しかし、中国国内の環境状況悪化からゴミの受け入れに規制がなされ、他国でも規制がかかっています。このような状況から、今後はプラスチックゴミを海外で処分するのが難しいと予想されます。
日本国内の脱プラスチックに向けての取り組み①自治体
プラスチック削減を宣言するなど脱プラスチックを意識する自治体が増加しています。横浜市(神奈川県)の「よこはまプラスチック資源循環アクションプログラム」、鎌倉市(神奈川県) の「かまくらプラごみゼロ宣言」、気仙沼市(宮城県)の「気仙沼市海洋プラスチックごみ対策アクションプラン」などがその例です。
取り組み内容は、正しいゴミの捨て方の啓発やポイ捨ての防止、リサイクルの推進、清掃活動など多岐に渡ります。また、庁舎内におけるプラスチック製品の削減や、環境に配慮した商品の積極的購入なども行われています。
日本国内の脱プラスチックに向けての取り組み②企業
各企業でも脱プラスチックの動きが高まっています。例えば外食チェーンでは、プラスチック製ストローの廃止や紙製ストローへの切り替え、テイクアウト用に紙袋を優先的に使用するなどの取り組みがされています。
コンビニ・スーパーでは、自社製品の容器・包装などを紙やバイオマスなどの環境配慮型素材に、有料になったレジ袋を従来のプラスチック素材からバイオマス素材を配合したものに変更するなどが見られます。
脱プラスチックに向けて私たちにできること

脱プラスチックは私たち1人1人にとっても身近な取り組みです。最後に、脱プラスチックに向けて私たちにできることを紹介します。
ルールを守ってゴミを捨てる
指定の場所・時間といったルールを守ってゴミを捨てることは脱プラスチックへの貢献につながります。正しく分別をすればスムーズな処分・リサイクルなどが可能です。ポイ捨てをやめることで、自然の中にプラスチックゴミが混ざることを防げます。
繰り返し使えるアイテムを積極的に利用する
使い捨て商品ではなく、繰り返し使えるアイテムを利用することで、プラスチック製品の削減を図れます。例えばマイバッグ・マイボトル・マイ箸などの利用が有効です。その都度使い捨ての商品を買わないことは節約にもつながります。
脱プラスチックの必要性や課題を知り、循環型社会を目指そう

脱プラスチックは海・土壌・大気とさまざまな環境のプラスチック汚染を防ぐため重要な対策です。また、循環型社会を目指す上で、リサイクルがカギとなる脱プラスチックは必要性の高い取り組みと言えるでしょう。明日の循環型社会を目指して、自分にできることから始めてみませんか。