
- 食料問題・地球環境
- 2022.03.27
地球環境に優しいエコフィード。取り組みのメリットと個人でも簡単にできること
食品残さなどから作られるエコフィード。資源を有効活用できるエコフィードは、食品ロス・食料自給率など、私たちが直面するさまざまな問題を解消する可能性を秘めています。今回は、エコフィードのメリット、取り組み事例など、エコフィードの知識を深めるために役立つ情報を解説します。環境に優しい行動をしたい人もぜひ参考にしてください。
エコフィードとは

まずは「エコフィードとは何か」という基本的な部分から見ていきましょう。この言葉が使われ始めたきっかけなども解説します。
エコフィードは環境に配慮した飼料
エコフィードは「eco(環境)」と「feed(飼料)」という意味の言葉を合わせた造語です。エコフィードの原料となるのは、食品製造副産物(パン屑、菓子屑、醤油粕、ビール粕など)、売れ残った弁当などの余剰食品、調理残さ(カット野菜屑、廃食用油など)、規格外の農産物である農場残さなどです。通常廃棄されるものを利用しているため、資源を有効活用した環境に優しい飼料だと言えます。
エコフィードの始まり
エコフィードという言葉が使われるようになる前から、家庭から出た生ゴミや食品ゴミを家畜の飼料として活用する方法はありました。ですが家庭から出たゴミの中には、腐ったものや異物(ビニールやガラス片)などが混入している場合があり、家畜の健康に問題をきたす可能性も。そのため、企業では家庭ゴミの活用はなくなっていったそうです。
エコフィードという言葉は2007年に特許が取得され、現在は公益社団法人中央畜産会が特許を有しています。食品残さなどを利用した、畜産のイメージ向上を狙う目的でこのような言葉が生まれました。
エコフィードのメリット

エコフィードには、さまざまなメリットがあります。ここでは、エコフィードを利用して得られるメリットを解説します。
安全面に配慮された飼料である
エコフィードは安全面に気を配って製造されている飼料です。食品ゴミの成分を分析したり、製造工場内で品質の維持を徹底したり、厳密な衛生管理が行われています。また、エコフィードには液体状の飼料があり、家畜に供給するときに固形の飼料のような粉塵が起こりません。これにより、家畜の肺炎発生などを抑制でき、薬の使用を減らすことも可能です。
コストを抑えられる
食品を廃棄物として焼却処分する場合には、費用が発生します。ところが、食品ゴミをエコフィードに加工すると処分にかかる費用や労力などがカットできます。また、エコフィードは原料費も安いため、それ自体の価格も安価です。これによって、食品ゴミを提供する事業所側、エコフィードを利用する畜産農家側、双方がコストを抑えられて経済的にもメリットがあります。
資源を有効活用できる
エコフィードの最も大きいメリットと言えるのが、資源を有効活用できること。材料として使用されるのは、食品工場の製造過程で余ったパン屑や菓子屑、小売店(スーパー・コンビニなど)の売れ残りの食品などです。
これらの食品をゴミとして廃棄せず、家畜の飼料にすることで、資源の有効活用につながります。また、ゴミの量も減らせて環境に優しい点もポイントです。
食料自給率を向上させられる
日本の食料自給率は4割に満たないほどで、決して高いとは言えません。家畜の飼料用穀物などは国内での生産が少なく、そのほとんどを輸入に頼っています。しかし、エコフィードを活用すれば海外の穀物を使用した飼料は使わず、国内で加工した飼料で家畜を飼育でき、食料自給率の向上につながります。
エコフィードを利用して家畜のブランド化を図れる
エコフィードで飼育された家畜は、やわらかい・旨味が濃いなど肉質が良いと言われています。家畜は飼料によって肉質などが変化するため、特定の食品残渣を使用したエコフィードを与えて肉質に特性が出るよう飼育し、ブランド化して売り出すことも可能です。
実際に多くのブランド肉や高ランク肉でエコフィードの利用が見られます。ブランド化した家畜は市場でアピールしやすく、さまざまなマーケティング戦略が練られるでしょう。
エコフィードを利用した取り組み事例
エコフィードは実際に現場でどのように活用されているのでしょうか。ここでは、エコフィードを利用した取り組み事例を紹介します。
地域の名産品の食品ロスをエコフィードに利用した例

秋田県横手市にある株式会社菅与では、東北エリア内から毎日食品ロスを受け入れています。受け入れている量は1日平均30〜50tで、受け入れている食品はホエイやパン類の他、秋田県の名産品である稲庭うどんの食品残さなど。1ケースごとに食品残さの状態をチェックしたり、包装済みのものは手作業で丁寧に包装を取り除いたり、丁寧な品質管理がなされています。
エコフィードで飼育された豚は「笑子豚(えこぶー)という名前で販売されています。付加価値のつく方法で飼育された豚でありながら、飼育コストが低く抑えられているという理由により、安価で購入できることが特徴です。
食品ロスを餌にして循環型のタンパク質を生産した例

他にも食品ロスを利用した取り組みをしている企業があります。株式会社グリラスでは、小麦のフスマなどを餌にして生産されたコオロギで、循環型のタンパク質を生産しています。コオロギは、タンパク質・ミネラル・ビタミン類など、生きるために必要な栄養素が豊富に含まれた食材です。
また脱皮殻は化粧品原料として開発中であり、糞は農業用肥料として使用可能など無駄もありません。牛や豚などの他の家畜と比べても、飼育する土地や餌・水の量が少なく済むので、環境に優しいと言えます。
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エコフィード推進のため個人でも簡単にできること

エコフィードの原料として使用される食品残さは、基本的に事業所から排出されるものです。しかし、個人単位でもエコフィード推進のためにできることはあります。最後に、エコフィード推進のため個人でも簡単にできることを紹介します。
エコフィードに関する知識を深める
まずはエコフィードに関する知識を深めることから始めましょう。エコフィードという言葉はそこまで知名度が高いものではありません。食品残さ飼料のイメージアップを願ってエコフィードという言葉が作られましたが、一般の消費者にはエコフィードの存在自体があまり浸透していないのが現状です。そのため、「エコフィードは食べ残し」と間違って認識されていることも。間違った認識を正すには、エコフィードに関する知識を個人単位で深めることが必要です。
エコフィードで飼育された家畜の商品を購入する
エコフィードで飼育された家畜は食肉などに加工され、さまざまな場所で販売されています。その販売されている商品を購入するのも個人単位で簡単にできることの一つです。エコフィード商品を選ぶポイントは、パッケージに「エコフィードの記載がある」か、「エコフィード利用畜産物認証マークが付いている」か。
エコフィード利用畜産物認証マークとは、エコフィードで飼育された家畜からの畜産物または畜産物を加工した食品で、公益社団法人の中央畜産会から認証されたものに付けられるマークのことです。エコフィードで飼育された食肉の需要が高まれば、エコフィードの認知度も高まります。
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エコフィードは地球環境に配慮した未来につながる資源の活用方法

エコフィードは食品残さを活用した地球環境に優しい飼料です。エコフィードの製造・利用自体は企業間で行われるものですが、商品の購入などエコフィード推進のために個人単位でできることもあります。正しい知識を持つことで、地球環境をより良くするための行動を起こすことができます。ぜひこの記事を参考に、食の資源の活用方法について考えてみてください。