昔は55種も食べていた、日本の昆虫食の歴史

昔は55種も食べていた、日本の昆虫食の歴史

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日本でイナゴや蜂の子が食べられている地域があるのは、ご存知の人も多いはず。独特の風味や味わいがあり愛好者も多く、スーパーなどで購入できるものもあります。イナゴなら食べたことがあるといった人もいるのでは。今回は日本人はいつから、どういう背景で、どう昆虫を食べていたのかといった昆虫食の歴史をテーマにお届けします。

INDEX

日本の昆虫食はいつから始まったのか

竪穴住居

縄文時代から食べられていた可能性がある

日本では古くから昆虫が食べられていたといわれていますが、縄文時代に昆虫を食べていたかは解明されていません。それは、種子や骨、貝殻などに比べて物的な証拠がほとんど残っていないからです。しかし、人類が2足歩行に移った頃のヒューマンコプロライト(人糞の化石)を世界各地で調べたところ、一番多く発見されたのが昆虫だったことから、縄文人も昆虫を食していたのではないかと考えられています。

日本における昆虫食の最古の記録は、平安時代に書かれた日本現存の最古の薬物辞典「本草和名(ほんぞうわみょう)」にあります。この中には、イナゴが薬用として食されていたことを示す記述があります。この書物は当時の中国(唐)の薬学に則り編纂されたもので、後世の医学に影響を与えました。時代が下るとさらに多くの書物に昆虫食が記録されており、イナゴだけでなく、蛾の幼虫(推定)やカミキリムシの幼虫(推定)などが食べられていたことが示されています。

記録上、日本における昆虫食は平安時代以降とされていますが、それよりもずっと以前から昆虫は食べられていたと推測できます。物的証拠がないとはいえ、狩猟採集をしていた縄文人にとって昆虫は身近な食料であったことでしょう。

江戸時代にはイナゴの蒲焼売りなどがあった

江戸時代の町の風景

江戸時代以降になると、昆虫食に関して多くの記録が残されています。江戸時代の有名な百科事典・守貞謾稿(もりさだまんこう)の中には、イナゴの蒲焼売り(螽蒲燒賣)の説明があり、イナゴを串に刺して蒲焼にして食べていたことが示されています。イナゴの蒲焼は夏の風物詩でもあったことから、庶民の食に浸透していたことが分かります。

この時代に庶民が頻繁に食べていた昆虫には、イナゴ・スズメバチ類の幼虫・タガメ・ゲンゴロウ・ ボクトウガやカミキリムシの幼虫(柳の虫)・ブドウスカシバの幼虫などがあり、調理法も煮る・揚げる・焼く・漬けるなどなどさまざまでした。今でも日本の内陸部で食べられている「イナゴの佃煮」は、この頃から定番の昆虫食だったといわれています。また江戸時代には「蚕のさなぎ」も食べられていました。日本初の虫類図譜の「栗氏千虫譜」にも、蚕のさなぎが子どもの疳の虫に効くと示されていますが、これは養蚕がすでに行われていた平安時代頃から食べられていたと考えられています。

大正時代には食用は55種、薬用としては123種

人力車

大正時代には、昆虫学者・三宅恒方によって食用・薬用昆虫の全国的な調査が行われました。調査の結果、食用として食べられていた昆虫は全部で55種あることが判明し、薬用としてはさらに多い123種が食べられていたそうです。ただし、回答はバッタやチョウなどが多かったため、実際の種数はもっと多かったと考えられています。昆虫がいかに有用な食材であったかということが、この調査で明らかになりました

今となっては「いかもの」や「げてもの」とも呼ばれている昆虫ですが、日本では100年ほど前まで日常的に食べられていました。薬用として食べられていたことから、健康な体作りにも欠かせない食材として重宝されていたと考えられます。昆虫食は日本のみならず世界の伝統食ともいえる、由緒ある食文化なのです。

※三宅恒方「食用及薬用昆虫に関する調査」

日本の昆虫食の広がりと衰退

富山県北アルプス

日本における昆虫食の広まりは、農耕文化と共にあったと考えられています。例えば、日本の昆虫食の代名詞ともいわれているイナゴの佃煮は、稲作の害虫となるイナゴを大発生する前に捕獲し、米や麦などの穀物では補えない栄養分を確保するという目的で生み出された食べ方です。蜂の子も同様で、山に入る時に危害を加えるスズメバチを駆除すると同時に、蜂に含まれる豊富な栄養を摂取することを目的としています。

このように日本における昆虫食とは、「生産活動の妨げの排除と栄養補給の両立」として浸透していたと考えられています。生産活動の妨げとなる虫を食することで、合理的かつ効率的な生産活動に役立てていたのです。

肉や魚の輸送・保存技術向上により衰退

市場の新鮮な魚

昆虫食は、時代の変化と共に衰退していきました。タンパク質など穀物では摂りきれない栄養を補給する食材は、発達した輸送・保存の技術によって送られてくる新鮮な肉や魚などに代わっていったのです。

また、食の欧米化により次第に敬遠される存在になり、「気持ち悪い」というイメージが定着したり、農薬の使用などにより害虫駆除の手法が変化したりしたことも、衰退の原因の一つと考えられています。

現在は、珍味や高級食材に変化

時代の変化と共に必要性が失われていった昆虫ですが、完全になくなったわけではありません。昆虫は食卓にのぼる一般的な惣菜から、珍味や高級食材として扱われるように変化していきました。

日本における昆虫食の本場は長野県です。長野県のように山に囲まれた地域では、タンパク源となる海産物の捕獲が難しかったことから、タンパク質を豊富に含む昆虫が食用として発展しました。昆虫食は山間部での貴重なタンパク源として、味噌などの大豆製品と並び重宝されていたのです。昆虫は調理法によっては長期保存が可能なので、冬期の常備食としても活躍しました。

日本で食されている主な昆虫とは

日本食を食べる女性

今でも日本の一部の地域には昆虫食文化が残っています。ここからは、今も日本で食べることのできる昆虫を紹介します。

イナゴ

昆虫食の代表格イナゴは、農作物を食い荒らす害虫として大昔から恐れられてきました。日本でイナゴとして食べられているのはイナゴ科だけでなく、バッタ科に属するトノサマバッタなども含まれます。

イナゴの食べ方としては、醤油と砂糖で甘辛く煮付けた佃煮が有名ですが、茹でてから乾燥させて味噌と混ぜ合わせたり、火であぶっておやつとして食べたりといった食べ方もあります。昔は農作業時の休憩食としても食べられていました。

蜂・蜂の子

蜂の子も、日本における昆虫食の代表格の一つです。太平洋戦争中の日本では貴重なタンパク源として、全国的な食料不足を補っていました。日本伝統の昆虫食としての蜂の子は、主にスズメバチ科の蜂の子が使用されています。

独特の苦味を持つ蜂の子は、調理してご飯と合わせて食べるのが一般的。甘露煮や塩焼きなど、食べ方は地域によって異なります。また、成虫である蜂も油で揚げたり佃煮にして食べたりすることもあります。

蚕のさなぎ

毛虫の繭

昆虫食としての蚕は、糸を取ったあとの蚕です。蚕を食べる習慣は中国や韓国にもあり、漢方薬としても効能を発揮するといわれてきました。日本でも蚕は食用として人気があり、第2次大戦中には小学校でイナゴ採りが推奨され、製糸工場では糸を取った後の蚕のサナギを女子工員が食べてしまうほどでした。

糸を取ったあとの蚕のさなぎは、佃煮にして食べるのが一般的です。蚕の佃煮は日本だけでなく韓国でも食べられており、タイや中国では油で揚げて食べることがあります。

さざむし

ざざむしは冬の天竜川(長野県を源流とする一級河川)の浅瀬「ざざ」で採れる、食用の水生昆虫の幼虫の総称です。ざざむしとしてよく食べられるのは、トビケラやカワゲラなどの幼虫で、本場は長野県の伊那地方です。

ざざむしは天然物で量が限られているため非常に高価な昆虫食です。伊那地方では、近くを流れる天竜川で獲った昆虫が、ざざむしの佃煮として調理されています。

これからは食べやすい昆虫食へ

美味しい指を見せるポートした唇を持つ男性

現在の日本の食文化には保守的な面があるため、昆虫食はあまり馴染みのない食となっています。しかし昆虫食は昔から親しまれてきた食文化であり、地方や昆虫によっては現在も食されていることが分かりました。

そして現在は、食料危機や排出効果ガス削減の観点から再注目をあびています。見た目が苦手な方にも安心して食べられる昆虫食が続々と販売されています。グリラスでは食品ロスを餌にして育ったコオロギを日常食に取り入れ販売しています。

C. TRIA(シートリア)カレー

C. TRIAは、食品ロスを餌にして養殖したコオロギをパウダーにし、お菓子やパンなどに練り込んだ従来とは異なる「サーキュラーフード」としての昆虫食です。C. TRIAに使われているコオロギのタンパク質含有量の割合は肉や魚よりも高く、普段の食生活に取り入れやすい形にしています。

スパイスとグリラスパウダーの組み合わせで、さらに旨味と香ばしさが際立ったC. TRIAカレーは、いざというときのローリングストックにも最適です。具材の肉には大豆ミートを使用しています。

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C. TRIA ブレッド

C. TRIA ブレッドに使われているコオロギは、食物繊維・鉄分・カルシムが豊富に含まれた残渣、小麦のふすま(表皮)を餌としています。これにタンパク質が豊富なグリラスパウダーをプラスし、さらに栄養価の高いパンに仕上げました。

C. TRIAはこれからの日本の昆虫食を牽引するブランドとして、期待が寄せられています。

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