
- コオロギ・昆虫食
- 2022.03.22
知っておきたいゲノム編集食品と遺伝子組み替え食品の違いとは?
数年以内にはスーパーに並ぶだろうと予測されている「ゲノム編集食品」。2021年にはゲノム編集により品種改良されたトマトが、国内で初めてネット販売されました。ただゲノム編集食品と聞くとなんとなく安全性が気になる人もいるのではないでしょうか。混同されやすい遺伝子組み替え商品との違いや、ゲノム編集食品の作られ方、国内のゲノム編集食品の販売ルールについて紹介します。
ゲノム編集とは?

そもそもゲノム(genome)とは、遺伝子を表す「gene」と集合を表す「-ome」を組み合わせた造語で、生物のもつ遺伝情報全体を指す言葉。ゲノム編集とは、生物自身が持ち合わせているDNAとその修復機能を利用し、これまでの品種改良と同じ現象を高効率で起こさせる技術のことです。
ゲノム編集では、まずDNA上の特定の場所を切断します。切断されたDNAは、もともと生物に備えられているゲノム修復機能によって修復されますが、まれに修復ミスにより突然変異が起こります。この突然変異を利用して生物の性質を変化させ、目的に合った新たな性質を生物に作り出します。これがゲノム編集の仕組みです。
あらゆる面で期待されるゲノム編集
現在、私たちの食を支える農業は、将来的な食料不足の懸念や気候変動、環境問題などさまざまな課題を抱えるとともに、食の多様化やグローバル化といった新たなニーズも生まれています。ゲノム編集は、これらの問題を解決し品種改良をスピードアップする技術として注目されています。特に、これまで品種改良に長い年月を必要としていた作物での利用が期待されていることから、国内農業の強化に貢献しうる技術になると考えられています。
さらにゲノム編集は農業の分野にとどまらず、水産業・医療・工業での応用にも大きな注目が寄せられています。魚類を養殖しやすく改良したり、革新的な遺伝子医療で難病の治療法を確立したりするなど、ゲノム編集は私たちの生活を取り巻くさまざまな課題を解決し、ニーズに応える切り札として期待されているのです。
ゲノム編集によって新しい食品が生まれている
ゲノム編集は、DNAの特定の場所を切断し、DNAを修復させる技術。修復過程で突然変異が起こることがあります。
自然界でも起こり得る突然変異と同じ現象が起きるので、外来の遺伝子が残ることはありません。
この技術により、GABAが豊富に含まれているトマトや肉厚なマダイ、成長の早いトラフグなどが生まれています。これらの他にも、攻撃性が高く共食いしてしまうサバの稚魚が、ゲノム編集によって性質が変わり、生存率が上がるという研究結果もあります。
遺伝子が切れる現象は自然界でも起きている
自然界においてDNAが切れたり壊れたりする現象自体は、実は頻繁に起きていることです。自然の放射線や紫外線を浴びるなど、DNAはさまざまな刺激で自然と切れてしまいます。切れたDNAは元通りになろうとしますが、まれに修復がうまくいかないことがあります。ゲノム編集は、自然界と同じ現象をDNAの狙った部位で起こし、修復ミスを利用してもとの性質を変える方法です。
ゲノム編集では特定の遺伝子を変異させ、目的の性質を持った品種を作ることができるため、これまで行われてきた品種改良と比べると、大幅に時間を短縮することができるメリットがあります。よって気候変動や病害虫に耐えられる新しい品種などを、短期間で効率良く開発することが期待されています。
まれに起こるオフターゲット変異
目的の遺伝子以外が壊れ、予期しない変異を引き起こすことを「オフターゲット変異」といいます。オフターゲット変異が起こる頻度は低いものの、起こる可能性はゼロではなく、これは従来の品種改良も同様です。しかし、これまでの品種改良でも行ってきたように、ゲノム編集でも戻し交配(遺伝子組換えとゲノム編集がなされていないものを交配すること)や選抜の⼯程が何段階にわたって行われるため、最終的には好ましい変異だけを持つ作物を選定できている可能性が高いと考えられます。
ゲノム編集食品と遺伝子組み替え食品はどう違う?

前述した通り、ゲノム編集は狙った形質を意図的に得る技術に対し、遺伝子組み換えは外部の遺伝子を挿入する技術です。
遺伝子組み換え食品は、新たに遺伝子を加えることによって人体に害を及ぼすことがないか、国の安全性審査を受けることが義務付けられています。企業においては、アレルギーの原因物質や発がん性物質などが新たに生み出されていないか、成分解析や動物実験などを行います。そして、そのデータを国の食品安全委員会に提出し、厳しい審査を受けた上で許可を得て初めて、消費者に届けることができます。
日本では品種改良と差がないと判断

ゲノム編集は自然界でも起こり得る突然変異と区別がつかないため、現在の科学技術ではゲノム編集が成されているか判別するのは困難とされています。日本では「遺伝子を壊したゲノム編集食品に関しては、従来の品種改良による食品と差がない」と判断し、2019年に届出を行った上で販売できる制度が新設されました。
外来遺伝子が残らない場合は、開発者が食品の安全性を評価しその内容を販売前に届け出ることとしていますが、義務ではありません。一方外来遺伝子が残る場合は、遺伝子組み換えと同様の安全性審査が必要です。そしてこのようなルールは、輸入食品にも同様に課されています。
日本は多くの食品を輸出入していますが、ゲノム編集の利用において国際的な整合性をとるのは難しい状況にあります。よって、EU・オーストラリア・ニュージーランド・アメリカなど日本の主な貿易国におけるゲノム編集の規制は、検討中、もしくは相談に応じて対応することになっています(2019年3月時点)。
グリラスのゲノム編集技術

次世代フードとしてコオロギを加工した食品を販売しているグリラスは、徳島大学での30年に及ぶフタホシコオロギ研究を通じて確立したゲノム編集に関するノウハウや特許技術を継承。これにより、食用としての目的に沿ったコオロギ系統(品種)の生産を可能としています。
それまでコオロギは産業としての規模が小さかったため品種改良がされてきませんでした。しかしグリラスではゲノム編集の技術を応用することで、より食用に適した系統や大量生産に適した系統、機能性成分を持った系統など、コオロギの高度な品種改良を推進しています。
※現在グリラスから他社へ提供している食品原料や自社ブランド「C. TRIA」に使用しているコオロギは、品種改良されているものではありません。
今後もこれまでの研究を活かし、本格的なコオロギの大規模産業化に向けコオロギの品種改良に取り組んでいきます。
Gryllus Inc - 株式会社グリラス
ようこそ、株式会社グリラスの公式ホームページへ。グリラスは徳島大学の基礎研究をベースに、コオロギの可能性を社会に実装していくことを目的として創業したフードテックベンチャーです。
今後の食品選びに役立てよう

ゲノム編集食品は、数多くある食料課題を解決する手段の一つです。ゲノム編集食品が、私たちの食卓にたくさん登場する日が来るのもそう遠くはないかもしれません。ぜひ今後の食品選びの参考にしてください。
新たな選択肢としての昆虫食に関する記事も、あわせてチェックしてみてください。↓

昆虫食、そしてタンパク質豊富なコオロギフードに大注目! - Gryllus Magazine - グリラスマガジン -
サスティナブルな社会を目指す観点から、今脚光を浴びている昆虫食。なかでも食用のコオロギの人気が高まっています。コオロギってどんな味なの? 栄養価は? 粉末状になったコオロギなら食べやすいってホント? などなど、コオロギフードの真相に迫ってみました。