知ればきっと食べたくなる!プロが教えるディープで美味しい「昆虫食トリビア」

知ればきっと食べたくなる!プロが教えるディープで美味しい「昆虫食トリビア」

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最近ちらほら耳にするようになってきた昆虫食。でも、まだまだ食べたことがなかったり、知らないことばかりの人が多いのが実情です。

そこで今回は、2人の「昆虫食のプロ」に昆虫食にまつわるトリビアを教えていただきました。読んで楽しむ美味しい昆虫食の世界をお楽しみください。

教えてくれるのはこの2人!

ANTCICADA 篠原祐太さん

​​1994年生まれ。幼少期より地球を愛し、あらゆる野生の恵を味わう。昆虫食歴23年。有名店での修行を経て、創作昆虫食レストラン・ANTCICADAの代表。数千匹の生き物と同棲しながら、虫料理開発、ワークショップ、執筆、講演と幅広く活動。https://antcicada.com

TAKEO 齋藤健生さん

1985年生まれ。日本初の昆虫食専門ECサイト「昆虫食TAKEO」を運営するTAKEO株式会社の代表取締役。自社オリジナルの昆虫食商品の開発から世界の昆虫食商品の輸入・飲食店運営・トノサマバッタの養殖技術開発事業まで行っている。昆虫食販売歴8年目。https://takeo.tokyo

プロが教える!昆虫食の驚きトリビア9選

昆虫食の基礎知識から、プロだからこそ知り得る意外なトリビアまで幅広くインタビュー。
あなたはいくつ知っているでしょうか?

【トリビア①】虫は食べるもの次第で虫自身の味が変わる

アーモンド

アーモンドをエサに育てるコオロギを、齋藤さんが初めて試食したときに感じたというこのトリビア。
他にも京野菜で育てるなど、味付けをしなくともコオロギの個体そのものの風味を楽しめるものも存在するのだそう。

齋藤さん(以下、齋藤)「うちで取り扱っている商品のなかには、原料に国内の昆虫を使っているものも多いのですが、昆虫も食べているエサの風味が味に出るんです。
風味だけでなく栄養価もエサに大きく左右されるというのが面白いところです」

篠原さん(以下、篠原)「料理に使う昆虫も、どのエサを食べて育っているか念入りに調べます。味の強いもの、クセのないものなど、エサ次第で大きく風味が変わるのは昆虫食の特徴ですね」

齋藤「コオロギは雑食なので、生産者さんごとにエサのレパートリーも広いんです。その分、風味も幅広いから、飼育時に工夫する楽しみというのもあるようです」

【トリビア②】虫も地産地消!ふるさと納税の返礼品にも昆虫食が登場

肉や魚だけでなく、昆虫も地元産業として栄えさせたいという取り組みが目立ってきているようです。

齋藤「TAKEOでは地名のついた国産昆虫シリーズを多く開発・販売していますが、注文数も多く人気商品です。エサにその地域で育てた食材を利用する生産者さんもいて、地元から応援されていることも多いです。
現地の京野菜で大切に育てられた「京都こおろぎ」は、京都府亀岡市のふるさと納税の返礼品として採用されています」

篠原「ローカルの食材を使うことで地域性も出やすくなるし面白いですね。47都道府県で食べ比べとかしたらめちゃめちゃ面白そう」

【トリビア③】日本で一番昆虫食にゆかりがあるのは長野県!

長野県

長野県は今でも昆虫を使った佃煮で知られており、地元に昆虫食の文化が残っている土地です。なぜ長野県だけが、ここまで昆虫食の文化を引き継いできているのでしょうか。

齋藤「稲を食べる害虫としてだけ見るのではなく、食としても楽しもう、活用しようということで昆虫を食す文化が根付いたのではないかと思います。昆虫を使用した佃煮は美味しいですし、定着したことに不思議は感じませんね」

篠原「海に面していない内陸でもありますし、他の食資源が確保しづらかったこともあったのかもしれませんね。あとはシンプルに昆虫食が美味しいからだと思いますよ」

現在は、長野県庁など自治体が地域の文化をなくさないように後押しもあるそう。
佃煮工場も多くて地産地消が上手く成り立っているので、昆虫食の文化を守る土壌があるのではないでしょうか。

【トリビア④】虫は染め物の材料にもなる!アパレル業界も注目

ANTCICADAで提供している料理や飲み物の中には、虫の素材で色をつけた料理もあるのだそう。

篠原「例えばカイガラムシは赤の着色料、蚕の糞は緑の着色料の原料になるんです。うちで開発した蚕のフルーツブランデーなんかも自然由来ならではの優しい色合いが出ています」

齋藤「未利用の資源として昆虫やそのフンからまた新たな付加価値を見い出せるということも、素晴らしい考え方でいいですよね。サスティナブルの観点から見ても面白いし、食品工業として今後の発展にも期待が持てます」

【トリビア⑤】地域から守られる「ざざ虫」という昆虫がウマすぎる

長野県の上伊那地方に生息する「ざざ虫」。なんと昆虫のなかでは唯一、漁業権が必要な昆虫なのだそう。

篠原「もともとキレイな川の川底にしか生息しない幼虫で、長野県にはまだざざ虫漁業を専門に活動する漁師さんもいるそうです。天然の昆虫ということもあり、高級食材として漁業権で管理されているんですが…これがめちゃめちゃ美味しいんですよ!
たらこのような魚卵風の優しい味わいがあって、身が柔らかくて、まさに高級食材ですね。日本特有の自然を味わう食文化ということもあり、海外からも注目される昆虫です」

齋藤「地元でざざ虫漁を継承する人材が少ないという話を聞いて心配しています。世界でも珍しい食文化なので、途絶えることのないように応援していきたいです」

【トリビア⑥】春の風物詩の和菓子の香りがする虫がいる⁉

桜

幼少期から、自らの欲求で昆虫食を実践してきたという篠原さんからのトリビア。少年時代に食べたなかでもっとも感慨深かったのが桜の木についていた毛虫の味わいだったのだそう。

篠原「桜の木についていた毛虫から桜餅の風味を感じたことは衝撃でした。桜の葉を食べて育つから風味を身にまとうんでしょうが、地球の食物連鎖の偉大さを感じたんですよね」

齋藤「ANTCICADAさんで提供している桜毛虫のフンから抽出したお茶も、桜餅に似た風味を楽しめますもんね」

篠原「生き物を食べることで、自然とのつながりを感じられる醍醐味も届けていきたいです」

【トリビア⑦】冷やしたら杏仁豆腐の味になる虫がいる

杏仁豆腐

篠原さんのお店でも大好評というこのトリビア。とある虫の味わいを生かして、とってもおいしいデザートまで開発しちゃったんだそう。

篠原「フェモラータオオモモブトハムシという幼虫を茹でて2〜3日冷蔵庫においておくと、なぜか杏仁豆腐の味になるんですよ。もともとクリーミーで食べやすい虫なんですが、食材としての面白みには欠けると思っていたのに…。
冷やすことで独特の香りが引き立つんです。最近は梅シロップゼリーの中に入れてデザートとしてお店で提供しています」

齋藤「昆虫を使用したデザートというのは業界でもまだまだ珍しいので、梅シロップとの掛け合わせなんかは篠原さんならではのアレンジだと思います。甘い風味を持つ昆虫の活かし方、参考になりますね」

【トリビア⑧】世界ナンバーワンのレストランの虫メニューがグルメ通の話題をかっさらう

レストラン

「世界のベストレストラン50」で、これまで4回も世界一に輝いた、デンマークの首都コペンハーゲンにあるノルディックレストラン「noma(ノーマ)」。そんなレストランがなんと、アリを使ったメニューを提供し、野食好きだけでなくグルメ通からも大きく注目を集めました。

篠原「nomaが期間限定で日本でコース料理をやっていたとき、ボタンエビのアクセントとしてアリがトッピングされているメニューがあったんです。なるほどと思いましたね。
どこにでもいるし、環境変化にも強い虫なので、新しい食料になれば多くの食文化に影響を与えると思います」

齋藤「世界で評価されるレストランが新しい可能性を発信してくれたことで、昆虫食への期待もより広がったと思います」

【トリビア⑨】SDGs先進国では昆虫食が日常的に親しまれている⁉︎

フィンランド

ヨーロッパで最も昆虫食が普及しているのは、北欧文化が色濃く残るフィンランド。政府が昆虫を食品として2017年に認可しており、2019年時点で国内に約50のコオロギ農家、6社の企業があるのだそう。

篠原「北欧は特に環境負荷に対して問題意識を持っている人も多いので、関心が強い人も多いのでしょう。だからこそ、昆虫食への興味も強いんだと思います」

齋藤「日本は信州のように古くから昆虫食文化が根付いている土地があったり、それとはまた別に罰ゲームに使用するようなシーンがあったり。そして、昨今の昆虫食の盛り上がりがあったりと、世界的に見ても珍しい国だと思います。
選択肢が豊かな日本だからこその今後の展開、というのにも期待が持てるというのは間違いではないと思います」

昆虫食のプロも太鼓判!「昆虫は面白く、そして美味しい」

実際に昆虫食のプロであり、オタクともいえるおふたりにトリビアを出し合ってもらいましたが、お互いの知見を交換してみてこその新しい発見もあったとのこと。「まだ研究が終わっていない、昆虫食の美味しさと奥深さ」に魅了され続けているのだそう。

あなたもこの記事を読んで、昆虫食に親しんでもらえたら幸いです。「百聞は一見に如かず」とはまさにこのことです。


Photo_Ikki Fukuda Interview & Text_Shiori Mikuni Edit_Yasushi Shinohara

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